八月に読んだワールドトリガーがいま面白くなってきている話

 遅効性SFと名高い少年漫画「ワールドトリガー」を八月に読んだ。しばらく、しみじみ面白かったな…良い漫画読んだな…と噛みしめていた。その余韻が今までになく長く続いたので、九月になってから自分で情報を補完しようと思い立った。

 

キャラ全然覚えきれてないからpixivとwikiを参照するか…

→過去の関係踏まえると熱いシーンが多いな!?

→キャラの性格把握してからだと細部の描写が味しまくる!

→やべ!!!!!!面白!!!!!!

 

 それから今日まで、どんどんワートリが面白くなっている。

 一月前に読んだ作品が毎日面白くなっていく一方(⁉)という未曽有のハマり方をしているので、ワールドトリガーの何がそんなに面白いのか、現時点の感想を記録しておこうと思う。

 

注意!八月に読んだときの記憶をもとに今感じていることを上乗せして書いているため、細部があやふや。

 

 

 

 カッコいい集団戦、個性的な登場人物などワートリの魅力は様々に語ることができるけれど、一言でいうなら「世界の強度がとんでもなく強い」ところだと思う。精密な設定によって、物語世界が信じられないほど高い解像度を持って描かれている。(それが遅効性の所以でもある。一読で全ての旨味を受け取るのは難しいが、後からいくら嚙んでも味がする。)

 

バトル面(ランク戦)

 ワールドトリガーのバトルの中で特にその強度を感じたのがランク戦だ。知らないeスポーツの大会を見てるみたいだった。マップが設定されていて、チームの中にポジションがあって、解説と実況がいる戦闘。バトル漫画よりもスポーツ漫画に近い面白さなのが新鮮だった。

 これって、新しいゲームを考案して、そのゲームを何試合も成り立たせていて、楽しめるように描いてるってコト!?すげ~!

 各トリガーの性能の説明はよくわかんね~で読み飛ばしていたし、今も理解しきっていないけれど(これを理解していくとさらに面白いんだろう)その試合設定の巧みさは理解できる。

 特にその設定の強度を感じたのは、ある巻の質問コーナーで、読者から「これとこれを組み合わせると強いんじゃないか」と提案されていたことだ。作者が考えたルールを読者が使いこなして提案することができるくらいそのゲームが機能している。ある程度客観的に楽しめるくらいルールが強い。

 ランク戦では定石が存在するのも面白いところだ。途中に規則のあるゲームが出てくる漫画はたくさんあるけど、ある程度の歴史が積まれていて戦略の型があるゲームを何戦も行うからこその面白さがある。(スポーツ漫画っぽい部分)

 

登場人物

 世界の強度、解像度を支えるのは何といっても膨大な数のキャラクターだ。

 こんなにも沢山のキャラがいて、一人一人に厚みがある。型通りの性格ではなく、現実味のある人間らしさを持っている。大人しくて優しい雨取ちゃんが人を撃てないのは他人を傷つけたくないからではないし、三雲修は主人公の持つべき良識を欠いている。

(ボーダーに直談判しようと不法侵入を試みた回想を読んで戦慄した。意志の強さという言葉で表せる範囲を超えているし、倒叙ものを読んでいたのかとさえ思った。しばらくは三雲修視点の物語を信用できない……)

 外見も名前も口調も、あくまで現代日本(と考えても差し支えないほど)の範囲で特徴付けられているのに無理なく全員が違う人間だと分かるのはすごい。

 人間臭さは「好きなもの」のチョイスにも表れていると思う。三雲修が橋を好きなのとか。そして家族構成が明かされていることで、どのキャラクターにも家庭と生まれてからこれまでの人生があることを実感できる。通ってる学校が複数あるのも三門市の解像度を高めている。

 

関係性

 そんでこのキャラクター同士をつなぐ関係が無数にあって網を形成している!

 隊の関係に加えて先輩後輩、師匠弟子、同年代とかの交友関係が広がっている。関係性オタクにとっていくら汲んでも汲みつくせない油田だ。その関係に基づいた会話をするし、していたのだということが後からわかる。新しく知ったキャラの過去を踏まえると、今までのやり取りの味付けが変わる。

 ここで個人的に面白いと思ったのは、これらの演出に対して「伏線が凄い」という印象を持たないこと。もちろん、物語として伏線回収が見事な場面はたくさんある。しかしこういった登場人物の態度や言い回しの理由が後からわかることは、「伏線」と呼ぶほど大掛かりなものではないと思う。

 

 回収されるために読者に提示されているのではなく、ただ「その世界でそうなっている」から描かれているだけなのだ。

 

 世界の強度が凄い。

 

 いくら読んでも擦り切れない、掘れば掘るほど面白い、「もしも」を空想するに足る強度の世界。タイトルに世界を冠するのも頷ける。

 

 面白すぎるぜワールドトリガー。全巻揃えるために貯金するよ……!

 

おまけ

 ここまで書いて、こんなにも情報量の多いワールドトリガーが26巻までしか出ていないことの異常さに気が付いた。嘘だろ。26巻って銀魂なら吉原炎上編、ワンピースだと空島編だ。咄嗟に巻数の長い漫画と比べたせいもあるけど、どうしても26巻って気がしない。情報が濃くなる理由としてパッと思い浮かぶのは以下の二つ。

 

設定説明の仕方

 ナレーションではなく、解説と実況(作品内キャラクター)が試合展開を説明していること。これによって、試合の解説に加えて「どのように語るか」でキャラクターの個性を描くことができる。小南先輩の解説の例が分かりやすい。

 今やっている閉鎖環境試験でも、受験者の対応とその対応に対する評価をそれぞれA級隊員一人一人が採点する様子をチャット単位で描いてあることで二重三重に読者が読み取ることのできる情報量が増えている。

 膨大(と言っていいほど多数の)キャラクターが、モブにならないだけの個性を保っているのはこの仕組みのおかげではないか。

 

BBF

 ワールドトリガーがどんどん面白くなってきてから我慢できずに買ってしまった。情報そのものすぎる。まだ全部読めていないけれど、ワートリが好きな友人が推しを語るときにデータキャラみたいになってたのはこの本が原因だと思う。